It's Only チラシの裏 ~but I like it

つれづれなるままに書いてます。一番読まれないタイプのブログです。

Can't you see this old boy has been lonely

【日経かんそうぶん】私たちの望むものは

今朝の日経新聞、書評欄で、「蟹工船」ブームを巡る様々な論客の意見がまとめられています。
その中には「希望は、戦争」の赤木智弘氏や、「2ちゃんねる」のひろゆき氏などの主張も紹介されています。赤木氏のご意見は負け組からのそれで、ひろゆき氏のは勝ち組からのそれ、と言って良いでしょう。(ひろゆき氏は、おおよそのところ、社会に不満があるならば社会を攻撃するのではなく、社会の中に入って改善意見を述べるべきだ、と主張されています。これは、本気で社会改革をしたいのならば野党ではなく自民党に入るべきだ、という、よく言われる主張と軌を一にするものですね。)


しかしこのコラムを読んで感じたのは、どこにも核心部分が書かれていないな、ということでした。
自身、偽装個人事業主として不安定労働者をやっている私が日頃感じている「核心」とは、下記のようなことです:


(1)凶行に及ぶ人間は狂っている
前述のコラムでは秋葉原の無差別殺傷事件が、下手をするとタイトルにある「蟹工船」より多く扱われているのですが、この事件については同コラムだけでなく全般的に、やや的外れと言わせていただく他ない視点から分析されています。
私も若い頃には何度か凶行に及ぶ「妄想」だけは抱いた人間ですので、なんとなく分かるのですが、秋葉原をはじめとする事件の容疑者たちは、間違いなく狂っています/いました。それを、「容疑者はこう考えるべきだった」などと論じても残念ながら意味はないのです。
そもそも、裁判での精神鑑定って、あれ何のためにあるんですかね?
私は勉強せねばと思いつつ、サボっているのですが、厳密に鑑定するならば全ての凶悪殺人犯は「狂気」の状態にあったと思いますよ。


(2)何が狂気を引き起こすか
では何故、彼らは狂ってしまったのでしょうか?
それは、こんなことだろうと推察します:


a.労働者を人と思わぬ職場
派遣社員にかかる経費は人件費ではなく物件費として計上され、人事課ではなく庶務課などがコピー用紙やボールペンを扱う片手間に扱っているという場合が多数派と聞いています。非正社員は「雇用」ではなく「設備」なんですね。
そんなことですから、非正社員は人間扱いされないのも当然です。「時給が数十円高くなってしまった」「風邪をひいた」「脚を折った」など「不具合」が生じたら、何の躊躇もなくポイッと捨てられます。
そんな中で生きてると、気付けば自分も他人の命というものを、ものすごく軽〜いものとして見るようになってしまうんですね。
「誰でもよかった」の気持ちが、心底分かる状態になるんです。
そんな自分に気が付く時、思わず身震いします。


b.全く理解を示さない世間
今は正社員の労働環境も劣悪と聞きますし、現に私が勤める職場の一つでもパワハラがあって、一人の正社員がいじめに遭い、1日13時間、立たされ続けたというニュースがYahoo!のトップニュースにまでなりました。(会社というか法人側説明では「立ち仕事だった」とのことですが。オフィスの中でただ飲まず喰わずで立っている立ち仕事があろうとは理解に苦しみます。)
そんな現状ですから、分からなくもないのですが、正社員さんたちから非正社員らに対して、「楽しやがってクズが!」、「努力しねーから下流なんだよ!」などの罵声が飛び続けています。
しかし非正社員だって大変なんですよ。
「寝ない喰わない休まない」の鉄則を厳守しつつ、盆も正月も祝日も全て関係なく出勤し、正社員さまたちと同じか、それ以上の時間、働きます。ただ、例えば私の場合、毎日平均5〜8時間くらい電車などで移動しますが、それは勤務とみなされないため、実働時間で数えると確かに「パートタイマー」になっているだけです。
それを怠けてると言われるのは、何とも悲しいものがあり、怒りを感じることも多々あります。(それが狂気へと発展し、殺意になるのでは?と愚考しますが。)


c.全く理解を示さない親
以前、NHKでフリーターの特集番組を見た際、印象的だったシーンがあります。
派遣社員として働く息子に対して父親が説教する場面なのですが、こんな調子でした:
「努力しないから正社員になれないんだよ。
「お父さんも会社員だったから分かるが、真面目に頑張っていれば上司に認められてさ、正社員にしてもらえるもんなんだよ。」
これは私自身も父親からしばしば言われる言葉です。
「アルバイトってのはグータラがなるもんだ。
「『就職』って言ったら『正社員』になるってのが普通なんだ。」と。
これは日本中の家庭で交わされる会話らしく、少し前の『朝日新聞』「声」にも、同様の投書が寄せられていました。親に全く理解してもらえない派遣社員(女性)からの投書でした。
私が思うに、これが最もキツイことです。
体力の限界にトライして、フラフラで仕事頑張ってるのに、世間でも職場でも怠け者扱いを受け、さらに帰った家でまで全く同じ扱いを受ける……。
これで私のように少数でも理解してくださる友人がいたりとか、恋人がいたりする(私にはいないけどね(;_;)ならばだいぶ救われるのですが、そうでない場合には狂気へと一線を越えてしまう気持ちも良く分かります。


上記のごとく、非正社員らは狂う要因に囲まれて毎日生きており、そして実際に狂った人間が凶行に及ぶのだ、という認識を、もっと皆さんに持っていただきたいと、私は常々感じる次第です。
「甘ったれ」なのかも知れませんが、モノとして愛されずに生きること、歯を食いしばって努力してるのに怠け者と罵られることって、結構しんどいんですよ?