庶民の資産形成に個人型DCを勧めるのは如何なものか
かつて「日本版401k」と呼ばれた確定拠出年金は最近「DC」と呼ばれるようになり、このほど「iDeCo」と愛称が決まりました。NISAと比べて知名度の低いこの制度ですが、国も本腰を入れ始めたのでしょうか。書店でもこの制度の利用を勧める本が平積みで並んでいます。しかし私には疑問があります。
書店に並ぶ本が勧めるのは個人型DCで、一般庶民が老後の「自分年金」を作るのに最適、年利13%が可能!などと謳っています。だが、ちょっと待って欲しい。((c)朝日新聞)年利13%は目を惹きますが、その内訳は拠出額が全額、課税所得から控除になる点や、60歳以降に受け取る年金にも税控除が適用されることを加味した計算です。個人型DCで運用する投資信託などが必ず年利13%で殖えるわけではありません。元本割れも大いにあり得ます。これは極めてミスリードな意見と言わねばなりません。
しかも、個人型DCには加入時と加入期間中それぞれに手数料がかかります。最も安いと言われているSBI証券ですら、下記の通りです(16年9月18日現在):
加入時手数料 3,857円
口座管理手数料等(年額) 5,892円(残高50万円未満の場合)
2,004円(残高50万円以上の場合)
これはとてつもないコストです。拠出金からこんなに引かれて行くのでは貯まるものも貯まりません。一般の投資信託ならこんな費用はかかりません。
個人型DCを勧める本は皆、税控除で十分ペイできると言うのですが、例えば私はそもそもが所得税非課税です。住民税が安くなるとして、上の手数料分だけ安くなるのでしょうか?
個人型DCは、高所得者向けな制度のように思われます。高額納税をされている方ならば限度額まで拠出をすることによって税負担が軽くなり、確かに手数料分は十分ペイできるのかも知れません。しかし私のような者には費用ばかりかかって一般の投資信託より豊かな果実にありつけるということは、どうもなさそうな気がします。
日本版401kは難しい本を一冊読んで、かつて勉強しましたが、iDeCoとなった今でもまだよく分かりません。私の認識に誤りがあれば是非ご指摘ください。本当にお得な制度なのならば私も是非利用したいと思っています。